「ごめん、遅くなっちゃって」当時、彼は大学で体育会の野球部に入っていて、練習が忙しかった。
「でも約束でしょ。 連れてって」「今からD行っても、ほとんど回れないよ。
今度にしようよ」「今日、行くったら、行くの」彼を車に押し込み、無理やりハンドルを握らせた。 そこまでしたんだから、楽しめばいいのに、車中、ずっと機嫌が直らず、46時中も好きと言って〜と、カーステレオから流れるSの曲を聴きながら、ムッとしたまま。
アトラクションもほとんど楽しめなかった。 そもそも、私は乗り物酔いが激しく、遊園地はあまり楽しめる場所ではなかったのだ。
だから、私はHさんに遊園地、と言われた時、クラクラしていたとはいえ、NOと言わない自分が不思議だった。 よりによって遊園地、なのに。

案の定、私はすぐに気分が悪くなってしまった。 「これは、ちょっとニガテだから乗りたくありません」の、一言が言えず、しょっぱなから、スゴイのに乗ってしまったのだ。
乗り物の揺れが、私の三半規管を直撃し、私は真っ青な顔でベンチにのびてしまった。 頭の中がグルグルする。
「あのぉ、な、なんで遊園地に誘ってくれたんですか」息も絶え絶えに、聞いた。 「遊園地が好きそうな顔をしてたもんで」いったい、どんな顔だ。
その夜、まっすぐウチに帰りにくかった私は、Kチャンちに泊めてもらった。 KチャンもHさんに劣らず、単刀直入。
「どうだった、デートは?」卵型にキレイに整えた爪先で、カップみそ汁のブタを開けながら、ズバッと聞いてきた。 彼女はこれからご飯、というところだ。
私はウーロン茶をいただきながら、答えた。

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